2013年9月30日月曜日

字幕翻訳修業と裏ワザ

皆さま、こんにちは。ねこです。
英会話講師を始めて、丸3年が経ちました。
いやぁ、びっくりです!
正直言って、こんなに楽しい仕事だとは
思っていませんでした。
先日の土曜日も6レッスン、満喫してきました♪

ちなみに、翻訳の方は、もっと長い間やっています。
ビジネス翻訳を始めたのは、たしか1997年。
その後、2001年から映像翻訳の勉強を始め、
2002年の秋にF1関連の番組でデビューしました。

ひゃあ! もう11年!?
多少は上達したかしらね。(^^;

一応、年数だけは、中堅の域に入ってしまい、
駆け出しの翻訳者さんから、
相談などを受けることも増えてきたので、
今日は、僭越ながら、翻訳修業のことと、
ねこ流の裏ワザについて、
いくつか書いてみようと思います。

まずは、翻訳学校時代に、
仲間たちとやっていたことについて。
今、振り返っても、すごく勉強になったと思うのは、
課題を提出する際に、クラスメート2人にも字幕原稿を送り、
お互いにチェックし合ったことです。

いつも字幕を評価される側にいると、
なかなか字幕をチェックする人の視点で見ることはできません。
しかし、友人たちの原稿をチェックすることで、
「あっ、この表現は何だか紛らわしいな」と思ったり、
「わぁ! この訳し方、なんかステキ!」と思ったりと
いろいろな発見があります。
これは、本当に大きなことです!

実際に仕事を始めるようになってからも、
グループ翻訳やペア翻訳という形で受注すると、
例えば、1本の番組を前後半に分けて、
お互いにチェックし合い、誤訳や表記ミスを指摘したり、
わかりにくい表現について、代案を出したりします。
この作業をすると、
「どうして他人の原稿については、こんなにいろいろ気づくのに、
自分の原稿は客観的に見られないんだろう」と
本当に本当に驚きます!

おそらく、どんな仕事をするときも、仕事以外でも、
“客観的な視点を持つ”というのは、
すごく大切なことかもしれませんね。

もう1つ、字幕翻訳修業でよくやるのは、
実際に放送されている番組を録画して、
一時停止をしながら、字幕を書き写すことです。
特に情報が詰め込まれているドキュメンタリー番組の字幕を
せっせと書き写してみると、
「ああ、こうやって内容をまとめたのか」とか、
「へえ、流れを優先して、この情報を切り捨てたのか」など、
いろいろな発見があります。

駆け出しの頃に、よく言われたのは、
「1枚1枚の字幕をただ訳すのではなくて、
全体の流れを意識してください」ということ。
当時はなかなかそれを理解できなかったのですが、
最近ようやく、「こういう流れを作ると、
話の内容が気持ちよく頭に入ってくる」ということが
少しわかってきたように思います。

原文(原音)には、しっかり寄り添いつつ、
おかしな直訳はしない。
字面を訳すのではなく、意味を訳す。
できる限り客観的になりながらも、
発言した人の心に入り込んで、
その人が日本語で話した時の言葉づかいを想像する。
う~~ん、翻訳は本当に奥が深い!
まだまだ日々、修業です。


さて、長くなってきましたが、
今日はこのまま裏ワザの話も書いちゃいます。
いろいろと言葉を考えたり、情報の確認をしたりと、
翻訳には、莫大な時間がかかるので、
テクノロジーの力を借りて、
楽にできることは楽にしちゃうのはすごく大事!

細かい話をしていくとキリがないのですが、
とりあえず、モニターとマウスの話だけはしておきましょう。

字幕翻訳をするときは、いろいろなウインドウを開きます。
まずSST G1(字幕制作ソフト)、そして、辞書ソフト、
リサーチのためのウェブブラウザなどなど。
それをモニター1面だけでやろうとすると、
どうしても、こっちのウインドウを出し、
こっちをずらし…などと、細かい操作が増えてしまいます。
なので、最低でもモニターは2面にした方がいいでしょう。
こんな感じです。
(※実際は上のモニターにSST G1の画面、
下のモニターに辞書ソフトやウェブブラウザなどを表示します)


「デュアルモニターにしたところで、
何か変わるんだろうか」と、
最初はちょっと懐疑的だったのですが、
実際に使ってみると、効果は絶大でした!
1万円程度の投資で、作業効率がアップできるのだから、
これはさっそくやるべし!!という感じです。

もう1つ、劇的な変化をもたらしてくれたのが、
8ボタンマウスです。
各ボタンに自分の使いたいショートカットを仕込むことで、
右手だけで、サクサクといろんなことができるようになります。
ねこは、今のところ、こういう設定で使っています。


一番よく使うのが、親指操作をする左の2つ。
前が「Ctrl+C」、そして、後ろのボタンには、
PureTextというソフトを使ったショートカットを仕込み、
フォントなどの情報を一切排除して、
「Ctrl+V」ができるように設定しています。
これは、原文ウインドウに
スクリプトの英文を切り貼りしていく際に大活躍します。

それと、この写真には出ていませんが、
中央クリックの手前のボタンに、
「字幕分割」のショートカットを仕込みました。

これには、特殊な事情があります。
実はねこのPCはちょっとおかしくて、
SST G1で「Shift」+「→」を長押しすると、
ソフトが暴走してしまい、
最後のフレームまでが1枚のハコになってしまうのです。

そのため、今では最初から、自分の訳す部分を
すべて1枚のハコにしてしまい、
音の切れ目(※IN点から指定フレーム数戻ったところ)で、
この字幕分割ボタンを押し、
サクッ、サクッ、サクッと、
ハコ切りをすることにしたのです。
これが、案外、効率がいい!(笑)

そして、実際に訳す段階で、
1枚1枚、OUT点を短く縮めていきます。
おそらく、こんなやり方をしているのは、
ねこだけじゃないかと思うのですが、
これはこれで、ちょっとオススメです。^^

ただ、このやり方をする時は、
OUT点の変更をし忘れないよう、
十分ご注意くださいね。

ついでに、もう1つ。
NHKの「新用字用語辞典」と
共同通信社の「記者ハンドブック」は、
ATOKに組み込むと非常に効率的です。
実は用字用語辞典をチェックする時間って
けっこうバカにできないんですよね。
これが漢字変換する瞬間にポップアップしてくれるんだから、
こんな便利なことはありません。
「朝日新聞の用語の手引き」も、
早くATOKも組み込めるようにしてほしいものです。

さらには、「分かる/わかる」「時/とき」「他/ほか」など、
案件によって指定が異なるものは、
SST G1の右下のウインドウに、
「ほど」「ダメ」「マネ」「他」「ムダ」「ウソ」「時」「わかる」
という感じで並べて書いておくと、
毎回、調べ直す手間が省けます。
「2フレ戻し」「字幕間3フレ」「横16文字、縦12文字」
「ルビあり」「ダーシあり」といった情報もここに記入しておきます。

1つ1つは、とても小さなことのようですが、
何度も繰り返す作業を効率化することで、
トータルでは、かなりの時間を生み出すことに
なるのではないでしょうか。^^

今日は翻訳者さん向けの
かなりマニアックの情報満載でお届けしました。(^^ゞ

さっ、仕事にとりかかろっと♪