2014年10月10日金曜日

翻訳と日本語

皆さま、こんにちは。ねこです。
村上春樹氏のノーベル文学賞受賞が
未来のお楽しみということになり、
ちょっぴり残念な気分です。

実は、村上氏は、ねこの人生に
大きな影響を与えた作家さんです。
猫を飼い始めたのも、翻訳業を志したのも、
図書館が好きなのも、料理が好きなのも、
すべて村上氏の影響です。

ねこが、旅先で仕事をするのも、
世界のあちこちで原稿を書いている村上氏の
ライフスタイルへの憧れだったりするんですよね。

以前、翻訳学校で日本語の文章力を
磨くための講座を受講した際、
「村上春樹氏の文章から学べ」という話を
聞いたことがあります。

今、探してみたら、2001年11月13日の
授業のノートが見つかりました!
「村上春樹氏、ノーベル文学賞最有力候補」
という講師のコメントのメモ書きがあります。
それが現実になる日は、きっと近づいているはずです。

文学賞の話はさておき、
春樹氏の文章から、いったいどんなことが
学べるのでしょうか。

それは、一文の簡潔さです。
一文に入れる情報は1つだけ。
ただし、文章が単調にならないように、
接続詞や語尾などで調整をしていきます。

これは、まさに字幕翻訳にも通じるワザです。
字幕の基本的なルールとして、
「3枚以上にわたって続く字幕はNG」というものがあります。
文章がどこまで続くかわからない状態で
字幕がパッ…パッ…パッ…と出続けていくと
読んでいる人が疲れてしまうからです。

その授業では、良い文章の例として、
NHKの「プロジェクトX」のナレーションも
挙げられていました。
余計なものを限界まで切り捨てていき、
本当に残った大切な1つのことだけを伝える。
「考え抜かれた上でのわかりやすさ」という説明が
ノートに書いてありました。

ブログも、あんまりだらだら長く書いちゃ
いけませんね(笑)

また、その授業の中では、リライトの大切さが
強調されていました。

「文章が完成した!というところでやっと半分。
文章を作るのは粘土細工に似ている。
全体の形を作ってから細部を整える」

これは、普段の翻訳作業で実感しています。
ひととおり訳し終えたという段階の原稿から、
細部を整えていく段階が、最も面白いプロセスです。
(納期が近いと、非常に焦りますが…)

ところで、字幕納品直前のチェックワザを
1つ編み出しました。
これは、SST G1利用者にしか
わからないお話ですが、
もしかしたら、他の業務に携わる方でも
何かの役に立つかもしれません。

まずは、エクセルの見直しリストを用意します。



それを範囲選択して、コピーし、
そのままワードの新規文書に貼り付けます。


字幕番号3に赤の波線が出ているのが見えますか?
「発見がありました」というのを
「発見があります」と修正した際、
「し」を削除し忘れたという例です。

超過密スケジュールで翻訳をした時などは
見直しリストを印刷してチェックしても
どうしてもミスを見落としてしまうことがあります。
でも、コンピューターは正直ですから、
「この文字の並びは変だよね~」というところに、
ご丁寧に赤のにょろにょろを出してくれます。

改行にかかってしまい、
うまく発見されないこともあるかもしれませんが、
それでも、こういう機械的なチェック方法を
活用するというのは、ひとつの手だと思います。

実は昨日、30分尺の字幕を納品する際も
このやり方で、1か所、ミスが見つかりました(汗)。
翻訳者の皆様、ぜひ、活用してみてください。


<今日のおまけ>

過去の字幕翻訳ネタも、よかったら参考にしてくださいね。

「字幕翻訳修業と裏ワザ」
http://interesting-languages.blogspot.jp/2013/09/blog-post_30.html

「裏ワザ補足説明」
http://interesting-languages.blogspot.jp/2013/10/blog-post.html