2015年2月11日水曜日

翻訳の勘どころ

皆さま、こんにちは。ねこです。
先ほど、音楽CD1枚11曲分の
歌詞対訳を無事納品しました。

思わず「無事」という言葉を使ってしまうほど
危険がいっぱい潜んでいました。
何が危険かって、誤訳の危険です。
いくつかの例をご紹介しましょう。
(※今日の内容は主に翻訳者さん向けです)

I'm on the fence
×「私はフェンスの上にいる」
○「どっちつかずの態度を取っている」

what's in store for me
×「私のために店に何があるのか」
○「私にはどんな未来が待っているのか」

At the end of the day
○「一日の終わりに」
○「結局のところ」「最終的には」
※文脈によって訳し分ける必要あり

It would't hurt
×「それは傷つけない」
○「それは問題にはならない」

<文例>
A few days won't hurt.
(2~3日なら問題ないよ)

I wear my heart on my sleeve.
×「私の袖にハートがついている」
○「心の内を露骨に話す」

When's the funeral?
○「葬儀はいつ?」
○「なんて暗い顔してるのよ!」
※文脈によって訳し分ける必要あり

翻訳の仕事をしていると、
次から次へとこういった表現に出会います。
一時期は、とにかくできるだけ
たくさんの表現を覚えようと
必死になっていました。

しかし、今回、英語圏に
長期滞在をしていて
少し考え方が変わりました。

おそらく最も大切なことは、
「この表現は、このままの意味じゃないかも」
ということに気づく力ではないかと思うのです。

そして、次に大切なのは、リサーチ力です。
まずは、たくさん辞書を引き、
辞書になくてもGoogleなどでフレーズを検索し
それでも納得がいかなければ
ネイティブに尋ねることも必要です。

質問に答えてくれるネイティブを
何人か確保することも
ある意味、「翻訳力」の中に
含まれるかもしれません。

映画ならこの人、音楽ならこの人…
というように、いろいろなタイプの
相談相手が作れたらベストです。

ただし、質問するのは、
いろいろ手を尽くして調べてからにしましょう。
自分でちょっと調べればわかるようなことを
何でも尋ねるのは、とても失礼です。

また、困った時だけ質問して
あとは知らん顔というのも、
非常に失礼な行為なので、
日頃からこまめに連絡を取ったり、
手間のかかる相談に乗ってもらった時は
何らかの形でお礼をするなどの
配慮も必要かと思います。

ネイティブの知り合いがいなくて
困っているという翻訳者さんは、
oDeskのような有料サービスを
使ってみるのも手かもしれません。
https://www.odesk.com/o/home

もちろん、人にに頼るだけではなく、
日々、テレビや映画などを見て、
表現のストックを増やしていくことは
とても重要です。

しかし、繰り返しになりますが、
あらゆる表現を身につけようとすることよりも、
「この訳は何かがおかしい」
という気づく力が誤訳を防ぐにあたっては
最も大切です。

訳せば訳すほど、いろいろな表現に出会い、
出会えば出会うほど、
「あっ、これも怪しいかも」と
気づけるようになってきます。

…って、なんだかとても
エラそうな文章になってしまいました。
ねこ自身も、まだまだ修業の身ですが、
少しは英語的感覚が身についてきたかなぁ…。